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NICTサイエンスクラウド研究プロジェクト一覧

 NICTサイエンスクラウド研究プロジェクト一覧です。NICTサイエンスクラウドは平成25年度より、プロジェクト型研究を行うことになりました。

平成27年度


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NICTサイエンスクラウド高速データ転送表示技術開発

 クラウドコンピューティングなどで利用される広域分散型ストレージシステムでは,LFN(Long Fat Network) のエンドツーエンド通信における高速なデータ移行の課題が残っている.この問題に対して,本研究ではアプリケーションレベルで高速なデータ転送を実現するUDT を用いた並列ファイル転送ツールを開発する.また,TDW(Tiled Display Wall)に転送したデータをリアルタイムに同期をとりながら出力するアプリケーションの開発も行う.

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NICTサイエンスクラウドセキュリティ技術開発

 クラウドコンピューティングなどで利用される広域分散型ストレージシステムにおけるセキュリティは,従来のセキュリティ要件である機密性,完全性,可用性に加え,真正性,責任追跡性,信頼性も必要とされている.Gfarm のセキュリティにおいては,責任追跡性,真正性,完全性についての研究開発はまだ十分に進んでいない. Gfarmにおける責任追跡性,真正性,完全性を保証するセキュリティ技術の研究開発を行う.

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Integrated Satellite Observation SIMulator for a Coherent Doppler Lidar (ISOSIM-L)による衛星搭載ドップラーライダーのフィジビリティスタディ

 衛星観測シミュレータISOSIM-L(Integrated Satellite Observation SIMulator for Coherent Doppler Lidar)を用いてコヒーレントドップラーライダーのフィジビリティスタディを行う。

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科学衛星搭載プラズマ波動観測器で得られたプラズマ波動の特徴解析

 我々のグループは、科学衛星によるプラズマ波動観測データを用いて宇宙プラズマ中の波動・粒子相互作用の研究を行っている。プラズマ波の波形観測は非常に有力な手段であるが、一般に波形データは、時間分解能が高く、データ量が膨大なため、観測データから所望の現象を選別・解析をすることが非常に困難である。
この問題に対し我々は、プラズマ波動のスペクトルや時間波形の特徴を定量的に表すことで、物理的に有意なデータを自動抽出し、その特性を解析する高度知的信号処理法の開発を行い、「あけぼの」「かぐや」などのデータ解析で多くの研究成果をあげてきた。
しかし、あけぼの衛星は過去26年余りにわたり、約30TB超の広帯域波形観測データを取得し、その大半は磁気テープに保管された状態で詳細解析に至っていない。またかぐや衛星によるWFC波形観測データも数百GBに達しており、その解析に多大な計算時間を要する。このため、大容量データを高効率かつ高速に一括処理するための信号処理手法を開発し、これまでに蓄積された波形観測データを一括して解析する環境の整備が必要である。
このような背景のもと、本研究プロジェクトは、NICTサイエンスクラウドを活用することで、より網羅的で高度なデータ処理手法を開発し、開発した手法を駆使して、新たな科学的成果につなげることを目的としている。

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惑星間空間磁場北向き時の磁気圏電離圏対流機構の解明

 地球磁気圏におけるプラズマ対流は物質の輸送とともに電磁エネルギーの輸送(ポインティングフラックス)も担っている。また対流は沿磁力線電流と密接な関係があり、電離圏との結合系においては、電流が磁気圏・電離圏でどう閉じているかを同時に考察する必要がある。惑星間空間磁場(IMF)が北向き時においても、太陽風のエネルギーは磁気圏に流入し様々な磁気圏・電離圏現象を引き起こしている。しかし観測上の制約から、その物理過程の理解は著しく原始的なままにとどまっている。太陽風-磁気圏-電離圏結合系の研究におけるこの停滞状態を打破するためには、(1)理論モデル(2)数値シミュレーション(3)観測を組み合わせた三位一体の取り組みが重要である。本研究プロジェクトでは、(2)数値シミュレーションの側面から、IMF北向き時の対流とその起源をエネルギー論の観点から解明する。具体的現象としては、電離圏対流パターンのIMF BY(朝夕成分)依存性、昼側カスプ域に現れるIMF BY成分に制御される沿磁力線電流系(いわゆるNBZ, midday region 1)、夜側プラズマシート境界層付近に現れるIMF BY成分に制御される沿磁力線電流系、シータオーロラ、三日月型対流セルの変形、交換対流セルの形成、混成対流セルの形成、などがある。数値シミュレーションでこれらの現象の再現を試み、再現が成功すれば背後にある物理過程を明らかにするとともに、極域電場ポテンシャルや沿磁力線電流分布など、シミュレーション結果を観測と比較可能な形で表現する。シミュレーションを観測データの解釈に用いる場合もあるし、逆にシミュレーションで発見された現象を観測データで検証する場合もある。観測とシミュレーションの比較で生じる相乗効果を狙っている。
具体的な進め方は、田中高史氏(NICT/九州大学)が開発された太陽風-磁気圏-電離圏結合系電磁流体コードを高速計算機で走らせ、結果をクラウド内の「バーチャルオーロラ」で可視化する。上述の各研究テーマについてシミュレーション結果の解析・物理的解釈を進める。また田中高史氏は現在空間解像度を大幅に向上させた新コードを開発中であるが、その試験の一環として上記研究テーマに応用してみる。空間解像度が現象再現に与える影響について評価を試みる。

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宇宙天気シミュレーション

宇宙天気プロジェクトを推進する目的で、スーパーコンピュータを用いた数値シミュレーションにより、太陽、太陽風、磁気圏、電離圏までのモデリングを目指す。現在ハウジングをしている高速計算システム(スーパーコンピュータシステム)の利用を行う。

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東南アジア域低緯度電離圏観測(SEALION)

NICT宇宙環境インフォマティクス研究室では、プラズマバブルなど衛星測位や衛星通信に影響を与える低緯度電離圏擾乱現象の研究を目的に、東南アジア域低緯度電離圏観測網(SEALION)及びNICT大洗テストフィールドの短波到来方向探査装置の運用を行っている。これらのデータを、効率的かつ省力的に収集・蓄積・データ処理・可視化するシステムの開発を行う。また、その観測データやクラウド上の関連するデータ(GPS-TECデータ等)を利用し、プラズマバブルの発生・伝搬機構の解明や、予測に向けた研究を行う。

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GNSS全電子数観測を利用した電離圏の研究

1990年代半ばから発達した、GPS受信機網データを利用した電離圏全電子数(TEC)観測により、さまざまな電離圏擾乱現象を、2次元的かつ定常的に観測することが可能になっている。また、近年GPS等の衛星測位の高度利用に伴い、測位誤差の最大要因である電離圏変動とその衛星測位に対する影響に関する研究が進められている。しかし、既存の全球TECマップや、現在GPSの電離圏遅延量補正に用いられている電離圏モデルは、空間分解能が不十分であるため、衛星測位への影響が大きいプラズマバブルなど中規模(数100-1,000kmスケール)の空間構造を持つ電離圏変動の全体像や生成機構、衛星測位への影響は明らかになっていない。これを明らかにするためには、広域かつ高密度の電離圏観測網の構築と衛星測位への影響調査が必要である。本研究では、国内外のGPS受信機網データを利用した高解像度電離圏観測技術の開発及び大規模データベース構築を進め、これらのデータを利用して、様々な時間・空間スケールを持つ電離圏擾乱現象について、その原因や全体像を解明することを目的とする。また、電離圏擾乱の衛星測位への影響など、電離圏以外の分野への影響に関する研究も行う。

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太陽風―磁気圏電離圏システム相互作用

MHDシミュレーションを用いて、磁気圏電離圏対流系が太陽風によってどのように駆動されているかを精密に調べる。 宇宙天気現象の舞台である磁気圏電離圏対流系の基本的物理過程を理解せずにサブストームをはじめとする様々な現象の研究を行うことは、将来破綻を招く。例えば、大気システムでの大気大循環の理解と同程度の磁気圏電離圏対流系の理解が必要である。 長期計画 極座標を使った磁気圏MHDシミュレーションモデルを駆使して、様々な太陽風変動を与えて、磁気圏電離圏対流系の振る舞いを調べる。さらに、モデルを改良し、太陽風データの組み込みと、拡散係数の入れ方の検討を行う。

H25計画
磁気圏電離圏対流系をnull-separator3次元トポロジーの下で理解する。例えば、マグネトシースでの力バランスや仕事の発生をnull-separator構造の下で理解する。このことはまだ誰も試みていない。

研究面の効果:3次元null-separator構造の下での太陽風-磁気圏電離圏相互作用の力学はまだ誰も扱っていない。しかしながら、これは磁気圏物理学を正しく理解するには最も基本的なことである。これに挑戦する。また軽いコードである極座標モデルを誰でも使える形にすることは、NICTを含め他の研究者が求めていることである。

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NICTサイエンスクラウドを用いたゲノムデータ管理基盤に関する研究開発

NICTサイエンスクラウドを用いたヒトのゲノム・シーケンス情報の管理基盤の研究開発が本件の目的である。

同管理基盤では、

・ヒト・生物のシーケンス情報の保管
・既存のシーケンス解析・ゲノム解析アプリケーションの運用
・シーケンス解析・ゲノム解析アプリケーションの新規開発・改良版の開発・運用
・シーケンス解析・ゲノム解析アプリケーションの開発用APIの開発と普及

を行う。

今年度のNICTサイエンスクラウドの利用により本データ管理基盤の、

・解析環境の構築
・解析処理

を行うことが可能になった。

しかし、現状解析処理の処理速度がローカル環境にある一般のPCと比較して大きく変わらないなど課題が多く、実用レベルに至っていない。

よって、来年度も引き続きNICTサイエンスクラウドを用い、処理速度の向上を重点に機能の向上を図りたいと考えている。

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GNSS可降水量データベース

GNSS可降水量データセットについて、最高水準の水蒸気データセットとして、多くの研究者とデータ共有するためにOSN上にデータを公開する。可能であれば、Webページを開設し、ブラウザ上で緯度経度情報などからデータを検索できるツールを設け利便性の向上を検討する。

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気象分野におけるビッグデータ利活用技術の研究

ひまわり初号機から8号機までのデータ及び平成28年度に打ち上げが予定されているひまわり9号の大容量データを、分散アーカイブ等の情報通信技術の実証研究を行っている情報通信研究機構のNICTサイエンスクラウドに提供し、気象庁外の多様な研究コミュニティーさらには広く一般の利用者に利活用しやすい形で提供する技術の研究を、気象庁と情報通信研究機構が共同して行う。
具体的には、NICTサイエンスクラウドのデータ収集技術(NICTY・WONM等)を用いて、気象庁が用意するサーバー(ひまわりクラウド)から気象衛星ひまわりの観測データを即時的に収集する。 収集したデータは、NICTサイエンスクラウドのデータ管理技術(広域分散ストレージ、トレーサビリティー、WSDBank等)を活用して管理する。さらに、NICTサイエンスクラウドのアプリケーション(STARStouch等)による公開などを行う。

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静止軌道および中軌道の衛星帯電プラズマ環境の解析

 静止軌道衛星は通信・放送・気象観測等に、中軌道衛星は測位システム等に広く用いられ、社会インフラとして重要な役割を担っている。これら軌道上の衛星の障害の主要な原因の一つに、周辺のプラズマ環境に起因する帯電現象がある。現在、衛星帯電に関する国際標準(ISO)の策定が進められており、静止軌道上のプラズマ環境モデルの検証と信頼度の向上、および中軌道の衛星帯電プラズマ環境の作成が求められている。本プロジェクトでは、モデルの信頼度向上のため、静止軌道上のプラズマ環境をキーパラメーターの算出から行い、モデルの検証と再解析を行う。また、中軌道はこれまで放射線劣化と内部帯電を引き起こす電子放射線帯の観測と研究が数多く行われてきたが、表面帯電を引き起こすkeVオーダーのプラズマ環境は十分には調べられておらず信頼できるモデルがない。そのため、2012年に打ち上げられた米国のVan Allen Probe衛星と2016年打ち上げ予定の日本のジオスペース探査衛星(ERG)のデータを解析し、中軌道域の衛星帯電プラズマ環境モデルの作成を行う。

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ジオスペース・放射線帯予測

サイエンスクラウドの計算機リソース、ストレージ、データ収集機能を活用して、ジオスペース・放射線帯予測に向けた研究開発を行う。具体的には次の3つである。

1)放射線帯経験予測モデルの開発及び予測サービスの運用
太陽風データ、地磁気活動指数、衛星位置での放射線帯粒子flux(各エネルギーレンジ、ピッチ角分布)を元に放射線帯のある位置におけるflux変動の時間変化を予測する経験モデルを開発する。基本的には1次元のモデルであるため、空間的な広がりを2)の研究開発と組み合わせて再現するために、複数衛星や、異なるエネルギーレンジ、ピッチ角分布の観測情報を再現する経験予測モデル群を開発する。

2)放射線帯・ジオスペース数値予測モデルの開発
将来の放射線帯・ジオスペースの数値予測に向けて、数値予測モデルの開発を行う。具体的には、前述した1次元の経験モデルの予測値を基に、粒子追跡手法等を用いて、磁気圏内の3次元分布の再構築を行ったり、その後の時間発展を、粒子の加速・加熱や消失過程の計算を取り入れて推定し、3次元的な放射線帯・ジオスペースの数値予測を行う。粒子追跡手法や粒子の加速・加熱、消失過程の計算プロセスを開発・改良すると同時に、背景場となる磁場・電場の3次元分布をグローバルMHDシミュレーションから取り込む必要があるため、MHDシミュレーションとの連携に関する計算も必要となる。結果は、3)の観測等を用いて比較・検証していく。

3)ジオスペース環境変動の観測及び地磁気脈動現象の検出
日本近傍の極域に展開した磁力計、HFレーダ観測網、及びそれを足掛かりにしたグローバルな観測データを用いて、放射線帯粒子変動の鍵を握る地磁気脈動現象及びその空間分布を同定する手法の研究開発や粒子の拡散・加速に関する経験モデルを構築する。また、高遅延・高ロス環境において効率的・高速にデータ伝送をする技術の検討を行い、室内実験等により有効性を検証後、インターネットでの試験及び実運用を検討する。データ伝送は、WONM(広域観測網監視)システムと連動する予定である。

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南極観測

電離層定常観測及びその補助データとして、南極昭和基地、及びしらせ航路上で計測したデータ、及び国内外の比較・試験サイト(稚内、サロベツ、アラスカ・ポーカーフラット、等)にて計測したデータを収集・蓄積し、データ処理や解析を実施する環境をクラウド上に構築する。その環境下において、遠隔地の観測システムの監視や効率的なデータ収集のための研究開発、南極昭和基地における電離層長期変動の解析、GPSシンチレーション観測装置を用いたGPSシンチレーションの発生や測位に対する影響、及び電離層電場ドリフトの導出、しらせで計測した長波標準電波の電界強度・位相情報の解析と、長波の中・長距離伝搬計算手法との比較・検証等を行う。

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次世代宇宙天気情報処理の研究

宇宙天気関連情報に並列処理によるデータ処理や可視化などの研究を行う。また、過去のデータをデータベース化して参照できるようにする。

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社会インフラのメインテナンスに資するシミュレーションとセンシングデータの解析

 年数を経た社会基盤構造物(インフラ)が急増する中,安全性や機能の確保が重大な課題になりつつある.主要構造物は遠隔管理による構造ヘルスモニタリング(SHM)が実用化されているものもあるが,道路橋を例にとれば,長大橋以外の地方の中小橋梁については,その膨大な数が故にSHMは実施されておらず,今後しばらくはコスト的な問題で実現はしないであろう.従って,ポータブルな検査装置を用いて,スケジュールに基づいてオンサイト計測を行うことが,中小規模の橋梁を検査する上では有効な手段となる。

多点において大量のセンシングデータが得られるようになった昨今,そのビッグデータを維持管理に活かすためには,データの集約,高速解析,異常箇所の抽出がキーとなる.ここで,現場の検査員が視覚的に損傷を検出できれば,検査効率は向上する.これまで,研究代表者らは,インフラ上の多点に設置したセンサから得られるデータを無線通信によって基地局PCに転送し,基地局PCでインフラの動態可視化・損傷評価を行ってきたが,膨大な社会インフラを管理するためには,サイエンスクラウドの利用が効果的である.本申請では,オンサイト計測で得られたインフラのセンシングデータ(振動等の動的指標)をクラウドに転送し,クラウド上で解析を行うことで,インフラの健全性の検査を効率的に行うことを目的とする。
また,センシングによって損傷位置がおおよそ決定できれば,次は損傷の性状を定量的に評価することが肝要となる.これまで,研究代表者らは,弾性波を構造物中に励起し,欠陥部からの散乱波を受信することで,欠陥を非破壊的に評価する手法についても研究を行ってきた.しかし,構造部材の形状・大きさ・材質は場所毎に異なるため,弾性波非破壊検査の精度を向上させるにはシミュレーションの援用が不可欠である.そこで,サイエンスクラウドを利用した弾性波シミュレーションの実施と波動伝搬の3次元可視化技術を加速することについても研究の目的とする。
 以上,センシングと非破壊検査の高度化という2つの観点から、サイエンスクラウドを利用した社会インフラのメインテナンスに資する研究を実施する。

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フェーズドアレイ気象レーダのデータ利用システム

局地的大雨や竜巻・突風等による突発的災害の予測と軽減を目指して、10~30秒間で隙間のない完全な3次元降水分布を高分解能で観測することができるフェーズドアレイ気象レーダを (株)東芝、大阪大学、情報通信研究機構(NICT)の産学官連携体制で開発した。本レーダは2012年5月に大阪大学吹田キャンパスの電気系建屋に設置され、その後観測運用を継続している。通常の観測モードでは現地に設置されたローカルディスクに1週間程度の観測データしか保存できないため(約1.4 TB/日)、高速ネットワークを介して大規模ストレージにデータ転送・保存することが必要である。同時にリアルタイムでのデータ公開が求められている。さらに観測された過去データを用いた解析的研究を進める必要がある。そこで本研究では、これらの課題を解決するためにNICTサイエンスクラウド上にフェーズドアレイ気象レーダのデータ利用システムを構築して、リアルタイムでのデータ転送と確実なデータアーカイブ、リアルタイムでのクイックルック画像の作成とデータ公開、3次元データ可視化などを目指すとともに、外部研究者も利用することができるデータ解析環境の提供を行い、多くのユーザを確保して研究成果を上げることを目標とする。また、2014年3月にNICT神戸(未来ICT研究所)とNICT沖縄センターに設置したフェーズドアレイ気象レーダ・ドップラーライダー融合システム(PANDA)の観測データについても阪大フェーズドアレイ気象レーダと同様のリアルタイム処理・データ利用を行う。

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極端気象降水監視システムとクラウド連携による竜巻・豪雨の発生過程の研究

 高知大学に設置された極端気象降水監視システムによる常時観測データをNICTサイエンスクラクラウドにアーカイブして解析し、竜巻、豪雨等の発生条件を明らかにし、リアルタイムの検知システムにむけた検討を行う。具体的には下記の2つの項目を実施する。

1.二重偏波ドップラーレーダーによる観測と解析
 高知大学朝倉・物部キャンパスに設置された2基の二重偏波ドップラーレーダーのプロダクトを用いて、積乱雲の急発達や組織化および、それに伴う竜巻等の突風発生の可能性などを調査し、豪雨、竜巻などの発達過程を表現するパターンを明らかにする。

2. 多点気象監視カメラによる雲画像の解析
 土佐湾周辺に配置された12基の監視カメラによる雲画像とレーダーのデータを照らし合わせ、 竜巻が発生しそうな積乱雲の特性を明らかにするとともに、 漏斗雲などのパターン認識による海上竜巻認知システムの開発を試みる。

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アジアの水災害解析に資するレーダー・雨量計データ解析(旧課題:福島原発事故に伴う放射性物質の初期拡散沈着過程把握のためのデータベース構築とグラフィック化)

 研究代表者らは、平成26年度9月から、NICTサイエンスクラウドを使わせていただき、それまで、京都大学防災研究所の一般共同研究等で整備した2011年3月の降水量分布などのデータを解析公開し(http://firis.stelab.nagoya-u.ac.jp/)、効果的にフラフィック表示を行ってきた。特に、なかでも、雨量計ではとらえにくい降雨構造、降雨の鉛直分布(3次元構造)を示すレーダーデータは、一般にはまだ公開されていない情報であり、定量性や扱いの難しさから、誰でも使える状態に公開しにくいため、STARStouchによる公開を準備中である。(データ解説を加えたらパスワード認証をはずし、一般公開の予定)

レーダー情報は降水量の絶対値としては雨量計に劣るが、その3次元構造の視覚的な効果は絶大で、現業的な(災害)予報にも、数値モデルとは独立に用いられている。申請者は、1997年12月の熱帯降雨観測衛星(TRMM)打ち上げ時から降雨レーダ(PR)初期検証、その後は気象学的解析を行っており、近年もTRMM/PR情報と独自収集雨量計データを組み合わせて、ヒマラヤ地域の気候値作成研究を発表している。本サイエンスクラウドでは、多量のデータの高速処理が効果的に可能であるため、同様の解析をアジアの他地域について実施することを、H27年度の研究課題として加えたい。
また、研究代表者は、豪雨・干ばつなどの極端気象災害に関するデータニーズについての専門家として、国際的なワークショップに2015年2月に招聘され、今後3年間に、極端降水現象の解析のためのデータ利用方法についてのdocumentationや、最適解析例を示す仕事に関与することになった。この目的に定量・長期観測の点で最適なデータは雨量計データであるが、同時に、ゲリラ豪雨などの極端降水はレーダーでないと捉えられない規模で発生することから、レーダーや衛星利用を提案する声も上記ワークショップではあった。そこで、レーダー(これまで地上は福島関係のみ処理)および衛星(17年の観測を終えたTRMM/PRや、静止気象衛星)を効果的に処理し、統計解析を行い、それらを、雨量計データによる解析結果と比較することを、NICT利活用研究として、提案したい。

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気象レーダデータのクラウド接続技術開発およびデータ処理技術開発

気象レーダの観測データサイズはますます大規模化しており、そのためにデータ処理をエッジ側(レーダ設置サイト)ではなくクラウド側において行うことが有効となりつつある。そのために、2つの技術についての実証実験を実際のレーダを使って行う。

①データ通信実験
気象レーダがクラウドを利用する際、レーダが設置されたネットワーク環境はさまざまであるため、通信環境及び通信状況に応じた効率的かつ目的達成が可能なデータ伝送が望ましい。本テーマでは、NICTサイエンスクラウドが開発した高速で柔軟性の高いデータ通信プロトコルであるHpFPを使って、レーダデータをクラウドに転送する。

②遠隔監視実験
気象レーダは遠隔地(場合によっては海外)に設置されるため、遠隔地からの運用監視が重要である。本テーマでは、NICTサイエンスクラウドが開発した広域観測網監視システム(WONM)により日本無線社製の気象レーダの遠隔監視実験を行う。
以上の実験は、WONM用にアプライアンスできる小型サーバにより実験を行う。

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STARStouchによるエピゲノムデータ可視化

多次元多階層型画像データベースによるマルチスケール可視化ツールSTARStouchをエピゲノムデータに応用して、ヒト及びモデル生物の様々な細胞におけるクロマチン構造をゲノムワイドに動的に可視化参照するシステムを試作する。本データベースはCRESTエピゲノム、及び新学術領域「クロマチン動構造」等他の大型エピゲノム解析プロジェクトと連携し構築を行う。その他、NICTサイエンスクラウドを活用したデータ収集・データ公開技術開発についても検討する。

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DAGIKプロジェクトとSCひまわり衛星プロジェクトとの連携

DAGIKプロジェクト(http://www.dagik.net/)において、ひまわり衛星データをデジタル地球儀ソフトウェアで利用するためのプロジェクトである。DAGIKプロジェクトが、NICTサイエンスクラウドひまわり衛星プロジェクトから最新のひまわり衛星画像データを取得し、デジタル地球儀ソフトウェアでの表示を行うためのコンテンツを作成し、公開を実施する。コンテンツの利用者としては、学校など教育機関、科学館、研究機関を想定している。

プロジェクト名研究代表者所属
NICTサイエンスクラウド高速データ転送表示技術開発 渡邉 英伸九州大学
NICTサイエンスクラウドセキュリティ技術開発 渡邉 英伸九州大学
Integrated Satellite Observation SIMulator for a Coherent Doppler Lidar (ISOSIM-L)による衛星搭載ドップラーライダーのフィジビリティスタディ 石井 昌憲情報通信研究機構
科学衛星搭載プラズマ波動観測器で得られたプラズマ波動の特徴解析 笠原 禎也金沢大学
惑星間空間磁場北向き時の磁気圏電離圏対流機構の解明 渡辺 正和九州大学
宇宙天気シミュレーション 田 光江情報通信研究機構
東南アジア域低緯度電離圏観測(SEALION) 津川 卓也
横山 竜宏
情報通信研究機構
GNSS全電子数観測を利用した電離圏の研究 津川 卓也
横山 竜宏
情報通信研究機構
太陽風―磁気圏電離圏システム相互作用 久保田 康文情報通信研究機構
NICTサイエンスクラウドを用いたゲノムデータ管理基盤に関する研究開発 原田 憲治株式会社カイ
GNSS可降水量データベース 藤田 実季子海洋研究開発機構
気象分野におけるビッグデータ利活用技術の研究 大友 猛気象庁
静止軌道および中軌道の衛星帯電プラズマ環境の解析 中村 雅夫大阪府立大学
ジオスペース・放射線帯予測 長妻 努情報通信研究機構
南極観測 長妻 努情報通信研究機構
次世代宇宙天気情報処理の研究 亘 慎一情報通信研究機構
社会インフラのメインテナンスに資するシミュレーションとセンシングデータの解析 中畑 和之愛媛大学
フェーズドアレイ気象レーダのデータ利用システム 佐藤 晋介情報通信研究機構
極端気象降水監視システムとクラウド連携による竜巻・豪雨の発生過程の研究 本田 理恵高知大学
アジアの水災害解析に資するレーダー・雨量計データ解析(旧課題:福島原発事故に伴う放射性物質の初期拡散沈着過程把握のためのデータベース構築とグラフィック化) 谷田貝 亜紀代名古屋大学
気象レーダデータのクラウド接続技術開発およびデータ処理技術開発 中井 健一日本無線株式会社
STARStouchによるエピゲノムデータ可視化 大川 恭行九州大学医学研究院
DAGIKプロジェクトとSCひまわり衛星プロジェクトとの連携 齊藤 昭則京都大学 大学院理学研究科

平成26年度


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NICTサイエンスクラウド高速データ転送表示技術開発

 クラウドコンピューティングなどで利用される広域分散型ストレージシステムでは,LFN(Long Fat Network) のエンドツーエンド通信における高速なデータ移行の課題が残っている.この問題に対して,本研究ではアプリケーションレベルで高速なデータ転送を実現するUDT を用いた並列ファイル転送ツールを開発する.また,TDW(Tiled Display Wall)に転送したデータをリアルタイムに同期をとりながら出力するアプリケーションの開発も行う.

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NICTサイエンスクラウドセキュリティ技術開発

 クラウドコンピューティングなどで利用される広域分散型ストレージシステムにおけるセキュリティは,従来のセキュリティ要件である機密性,完全性,可用性に加え,真正性,責任追跡性,信頼性も必要とされている.Gfarm のセキュリティにおいては,責任追跡性,真正性,完全性についての研究開発はまだ十分に進んでいない.Gfarmにおける責任追跡性,真正性,完全性を保証するセキュリティ技術の研究開発を行う.

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Integrated Satellite Observation SIMulator for a Coherent Doppler Lidar (ISOSIM-L)による衛星搭載ドップラーライダーのフィジビリティスタディ

 衛星観測シミュレータISOSIM-L(Integrated Satellite Observation SIMulator for Coherent Doppler Lidar)を用いてコヒーレントドップラーライダーのフィジビリティスタディを行う。

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時系列データ表示アプリケーション(STARStouch)の開発

 現在、多くの科学研究分野ではデータのほとんどがデジタル化され、その量および種類は大規模化の一途をたどっている。これからますます大規模化・複雑化するデータ指向型科学時代を踏まえて、ビッグデータ処理がより容易に、また一元的行うことができるクラウドシステムが求められている。

 NICTサイエンスクラウドは、地球惑星科学を含む様々な科学研究データおよびソーシャルデータのためのクラウドシステムである。NICTサイエンスクラウドでは(1)データ伝送・データ取集機能、(2)データ保存・データ管理機能、(3)データ処理・データ可視化機能の3つの柱(機能)から構成されている。それぞれの機能についての基盤技術を開発するだけではなく、複数の基盤技術を組み合わせることでシステム化を行うことができる。システムを実際に科学研究に応用・適用することで、様々な分野でのビッグデータ科学・データインテンシブ科学が可能となる。

 本研究では、NICTサイエンスクラウド上で時系列データ表示ツール(開発名:STARStouch)の研究開発を行う。これまでの多くの時系列データ表示用科学データWebアプリケーションは、Webアプリ用のミドルウェアなどによりデータの読み込みと画像表示を行ってきた。その多くは、日時やデータ選択を行う手間やデータ処理を行う処理時間がユーザビリティーを下げていた。STARStouchはクラウド上のデータ収集システム(NICTY/DLAおよびWONMシステム)により収集した科学データをGfarm/Pwrake等により並列処理することで画像化した時系列画像データを用いる。また、Ajaxやキャッシュプログラムにより閲覧しているデータに近いデータを優先的に読み込む非同期処理を導入することでユーザビリティーを上げている。

 STARStouchは様々な時系列データに対応するが、本研究では特に、①GEOTAIL衛星などの衛星ミッションの複数データ(プラズマ波動データを含む)、②地上でグローバルに観測されている地磁気データ、③オーロラ撮像などの画像データを主対象とし、年度内の一般公開を目指す。

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3次元Global MHDシミュレーション大規模可視化

 本研究では、NICTサイエンスクラウドにおいて動作する3次元Global MHDシミュレーションデータの並列分散可視化環境を整備し、大規模可視化を行う。5(または5以上)パターンの太陽風インプットパラメータに対して、次の可視化を実施する。さらに、その結果を検討し、太陽風パラメータに応じてプラズマ流体及び磁力線がどのように変化しているかを理解する。

①引き戻し機能

流体要素が計算領域から外に出た場合に、領域内に引き戻す機能を実装する。引き戻し機能は、以下の2種類の面に対して行う。

1. yz面での引き戻し可視化(流体要素・磁力線)

2. xy面およびxz面での引き戻し可視化(流体要素・磁力線)

②流体要素・磁力線追尾可視化(長時間可視化)

以下の太陽風中の流体要素の追尾可視化を行う。

1. 流体要素点の圧力可視化

2. 流体要素点の密度可視化

3. 流体要素点の温度可視化

③太陽風磁力線追尾

以下の磁気圏内流体要素の追尾可視化を行う。

1. 流体要素点の圧力可視化

2. 流体要素点の密度可視化

3. 流体要素点の温度可視化

④以下のfootprint可視化(長時間可視化)を行う。

1. Open/Closed/Detached磁力線

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太陽圏の巨視的構造とダイナミックスの研究

 太陽コロナを源として3次元的に拡がる太陽風プラズマ超音速流の生成過程はパーカーによる理論では、太陽風等温膨張の仮定の下で、簡潔に記述されている。しかし現実的には太陽コロナが約100万度の高温を維持しつつ且つ流体力学的な太陽風熱的加速に寄与しつづけるには、太陽表面からの電磁流体波動による太陽コロナへのエネルギー補給が、太陽表面から~15太陽半径にわたる空間で続いているはずである。また磁場の効果も考慮に入れなる必要がある。これらの効果を3次元MHDシミュレーションに適切に組み入れて衛星観測のデータと合致する太陽風速度を得ることが最終的な研究目標である。これが可能になれば宇宙天気の予報の精度も飛躍的に高まると期待される。

 また太陽風プラズマの擾乱や太陽フレアー、コロナ質量放出(CME)等の大規模変動のなどの太陽活動が、太陽を中心に約200AU(AUは地球-太陽間距離)の広がりを持つ、太陽圏に大きな影響を与えることが明らかになってきつつある。太陽風プラズマと星間ガスとの相互作用より太陽圏構造及びダイナミックな事象について新たな関心が広がっている。1977年に打ち上げられたボイジャー1号(V1)及び2号(V2)が、2004年及び2007年に相次いで太陽圏外圏の終端衝撃波を通過し、最近の観測ではV1はヘリオポーズを超えて星間空間に入ったとのことである。太陽圏外圏構造及びダイナミックスは観測、理論および計算機シミュレーション研究により研究内容も大きく進展しつつある。

 本研究では太陽コロナの加熱及び太陽風の生成過程を電磁流体的波動による一貫とした加熱加速効果として取り扱うMHDシミュレーション解析を行う。この課題は太陽圏内圏だけでなく外圏研究のためにも重要である。3次元MHD方程式中に加速及び加熱の効果を加え、しかもその効果は太陽磁場フラックスの広がり方(f)の逆数(即ち、1/f)に比例するとした解析(Nakamizo,2009)をを基礎にシミュレーション解析の進展をめざす。

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科学衛星搭載プラズマ波動観測器で得られた波形データの特徴解析

 我々の研究グループは、科学衛星によるプラズマ波動観測データを用いた宇宙プラズマ中の波動・粒子相互作用の物理機構の解明に取り組んでいる。特に波形観測は非常に有力な観測手段であるが、一般に波形データは、時間分解能が高く、データ量が膨大なため、観測データから興味ある現象を人手で選別・解析をすることが非常に困難である。

 この問題に対し我々は、プラズマ波動の周波数スペクトルや、時間波形の特徴をパターン認識の手法を用いて、物理的に有意なデータを計算機の力で自動抽出し、その特性を解析する高度知的信号処理法の開発を行い、「あけぼの」「かぐや」などのデータ解析において多くの研究成果をあげてきた。

 しかしながら、あけぼの衛星は過去23年余りにわたり、約20TB超の広帯域波形観測データを取得し、その大半は磁気テープに保管された状態で詳細解析に至っていない。またかぐや衛星によるWFC波形観測データも数百GBに達しており、汎用の計算サーバではその解析に多大な計算時間を要することが問題となっている。

 このため、大容量データを高効率かつ高速に一括処理するための信号処理手法を開発し、これまでに蓄積された波形観測データを一括して解析する環境の整備が必要とされている。このような背景のもと、本研究プロジェクトは、NICTサイエンスクラウドを活用することで、より網羅的で高度なデータ処理手法を開発し、開発した手法を駆使して、新たな科学的成果につなげることを目的としている。

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惑星間空間磁場北向き時の磁気圏電離圏対流機構の解明

 地球磁気圏におけるプラズマ対流は物質の輸送とともに電磁エネルギーの輸送(ポインティングフラックス)も担っている。また対流は沿磁力線電流と密接な関係があり、電離圏との結合系においては、電流が磁気圏・電離圏でどう閉じているかを同時に考察する必要がある。惑星間空間磁場(IMF)が北向き時においても、太陽風のエネルギーは磁気圏に流入し様々な磁気圏・電離圏現象を引き起こしている。しかし観測上の制約から、その物理過程の理解は著しく原始的なままにとどまっている。太陽風-磁気圏-電離圏結合系の研究におけるこの停滞状態を打破するためには、(1)理論モデル(2)数値シミュレーション(3)観測を組み合わせた三位一体の取り組みが重要である。本研究プロジェクトでは、(2)数値シミュレーションの側面から、IMF北向き時の対流とその起源をエネルギー論の観点から解明する。具体的現象としては、電離圏対流パターンのIMF BY(朝夕成分)依存性、昼側カスプ域に現れるIMF BY成分に制御される沿磁力線電流系(いわゆるNBZ, midday region 1)、夜側プラズマシート境界層付近に現れるIMF BY成分に制御される沿磁力線電流系、シータオーロラ、三日月型対流セルの変形、交換対流セルの形成、混成対流セルの形成、などがある。数値シミュレーションでこれらの現象の再現を試み、再現が成功すれば背後にある物理過程を明らかにするとともに、極域電場ポテンシャルや沿磁力線電流分布など、シミュレーション結果を観測と比較可能な形で表現する。シミュレーションを観測データの解釈に用いる場合もあるし、逆にシミュレーションで発見された現象を観測データで検証する場合もある。観測とシミュレーションの比較で生じる相乗効果を狙っている。

 具体的な進め方は、田中高史氏(NICT/九州大学)が開発された太陽風-磁気圏-電離圏結合系電磁流体コードを高速計算機で走らせ、結果をクラウド内の「バーチャルオーロラ」で可視化する。上述の各研究テーマについてシミュレーション結果の解析・物理的解釈を進める。また田中高史氏は現在空間解像度を大幅に向上させた新コードを開発中であるが、その試験の一環として上記研究テーマに応用してみる。空間解像度が現象再現に与える影響について評価を試みる。

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SS-MIX標準ストレージのNoSQL実装と並列分散処理の検証

 SS-MIXと互換性を保つために、患者ID、ディレクトリ構造、オーダ種のメタデータとHL7 2.xメッセージを一つのBSON文書として構成し、MongoDBに格納する。国民全体のレコードを保有すると仮定し、検査結果をランダムに生成したHL7メッセージを100億件生成し、100CPUコア上のmongodbに分散配置する。また、通常のファイルシステムとしてマウントできるように、SS-MIXの構造をmongoDB上で再現するFUSEモジュールを開発する。性能測定として、特定年齢・性別の各種検査結果の平均値、分散を求めるMapReduce処理を行う。また研究進捗に余裕があれば、より複雑なデータマイニング処理等も検討する。

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SMILESデータ処理

 国際宇宙ステーションに搭載されている超伝導サブミリ波サウンダ(SMILES) では地球大気の成層圏から熱圏下部までに存在する大気中の微量成分(オゾンやこれまで観測された実証のないラジカル分子種など)を従来の10-20倍の測定精度で観測している。

 サイエンスクラウド計算機では、取得した輝度温度情報をスペクトルに変換し、そのスペクトルを分子量等の存在量高度分布にするアルゴリズム研究開発と衛星データのビックデータ並列処理システム開発研究、そしてデータ配布を実施している。

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宇宙天気シミュレーション

 宇宙天気プロジェクトを推進する目的で、スーパーコンピュータを用いた数値シミュレーションにより、太陽、太陽風、磁気圏、電離圏までのモデリングを目指す。現在ハウジングをしている高速計算システム(スーパーコンピュータシステム)の利用を行う。

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東南アジア域低緯度電離圏観測(SEALION)

 NICT宇宙環境インフォマティクス研究室では、プラズマバブルなど衛星測位や衛星通信に影響を与える低緯度電離圏擾乱現象の研究を目的に、東南アジア域低緯度電離圏観測網(SEALION)及びNICT大洗テストフィールドの短波到来方向探査装置の運用を行っている。これらのデータを、効率的かつ省力的に収集・蓄積・データ処理・可視化するシステムの開発を行う。また、その観測データやクラウド上の関連するデータ(GPS-TECデータ等)を利用し、プラズマバブルの発生・伝搬機構の解明や、予測に向けた研究を行う。

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GNSS全電子数観測を利用した電離圏の研究

 1990年代半ばから発達した、GPS受信機網データを利用した電離圏全電子数(TEC)観測により、さまざまな電離圏擾乱現象を、2次元的かつ定常的に観測することが可能になっている。また、近年GPS等の衛星測位の高度利用に伴い、測位誤差の最大要因である電離圏変動とその衛星測位に対する影響に関する研究が進められている。しかし、既存の全球TECマップや、現在GPSの電離圏遅延量補正に用いられている電離圏モデルは、空間分解能が不十分であるため、衛星測位への影響が大きいプラズマバブルなど中規模(数100-1,000kmスケール)の空間構造を持つ電離圏変動の全体像や生成機構、衛星測位への影響は明らかになっていない。これを明らかにするためには、広域かつ高密度の電離圏観測網の構築と衛星測位への影響調査が必要である。本研究では、国内外のGPS受信機網データを利用した高解像度電離圏観測技術の開発及び大規模データベース構築を進め、これらのデータを利用して、様々な時間・空間スケールを持つ電離圏擾乱現象について、その原因や全体像を解明することを目的とする。また、電離圏擾乱の衛星測位への影響など、電離圏以外の分野への影響に関する研究も行う。

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太陽風―磁気圏電離圏システム相互作用

 MHDシミュレーションを用いて、磁気圏電離圏対流系が太陽風によってどのように駆動されているかを精密に調べる。 宇宙天気現象の舞台である磁気圏電離圏対流系の基本的物理過程を理解せずにサブストームをはじめとする様々な現象の研究を行うことは、将来破綻を招く。例えば、大気システムでの大気大循環の理解と同程度の磁気圏電離圏対流系の理解が必要である。

長期計画
 極座標を使った磁気圏MHDシミュレーションモデルを駆使して、様々な太陽風変動を与えて、磁気圏電離圏対流系の振る舞いを調べる。さらに、モデルを改良し、太陽風データの組み込みと、拡散係数の入れ方の検討を行う。
H25計画
 磁気圏電離圏対流系をnull-separator3次元トポロジーの下で理解する。例えば、マグネトシースでの力バランスや仕事の発生をnull-separator構造の下で理解する。このことはまだ誰も試みていない。

 研究面の効果:3次元null-separator構造の下での太陽風-磁気圏電離圏相互作用の力学はまだ誰も扱っていない。しかしながら、これは磁気圏物理学を正しく理解するには最も基本的なことである。これに挑戦する。また軽いコードである極座標モデルを誰でも使える形にすることは、NICTを含め他の研究者が求めていることである。

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NICTサイエンスクラウドを用いたゲノムデータ管理基盤に関する研究開発

 ヒトのゲノム・シーケンス情報の管理基盤の研究開発が目的です。

 次世代シーケンサーの普及によりヒト及び生物のゲノム・シーケンス情報の抽出が容易になりました。
しかしヒトの場合でいうと全ゲノム配列データだけで約1GB(30億塩基)、そのデータの元となるシーケンサーからの出力データはその数十倍のデータ量に及びます。
それらの大量のデータをセキュリティリスクからの回避、耐故障性の担保される環境の構築が今求められております。
それらに加え、高速なデータ転送、高速処理などが可能なNICTサイエンスクラウドが最適なクラウド環境と考えました。

 ・ヒト・生物のシーケンス情報の保管
 ・既存のシーケンス解析・ゲノム解析アプリケーションの運用
 ・シーケンス解析・ゲノム解析アプリケーションの新規開発・改良版の開発・運用
 ・シーケンス解析・ゲノム解析アプリケーションの開発用APIの開発と普及

 以上のような機能を備えたゲノム・シーケンス情報の管理基盤をNICTサイエンスクラウド上で実現するための研究開発を行いたいと考えております。

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GNSS可降水量データベース

 GNSS可降水量データセットについて、最高水準の水蒸気データセットとして、多くの研究者とデータ共有するためにOSN上にデータを公開する。可能であれば、Webページを開設し、ブラウザ上で緯度経度情報などからデータを検索できるツールを設け利便性の向上を検討する。

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気象分野におけるビッグデータ利活用技術の研究

 ひまわり初号機から7号機までのデータ及び平成26年度と平成28年度にそれぞれ打ち上げが予定されているひまわり8号・9号の大容量データを、分散アーカイブ等の情報通信技術の実証研究を行っている情報通信研究機構のNICTサイエンスクラウドに提供し、気象庁外の多様な研究コミュニティーさらには広く一般の利用者に利活用しやすい形で提供する技術の研究を、気象庁と情報通信研究機構が共同して行う。

 具体的には、NICTサイエンスクラウドのデータ収集技術(NICTY・WONM等)を用いて、気象庁が用意するサーバーからひまわり衛星(過去・現在・将来)のデータを収集する。

 収集したデータは、NICTサイエンスクラウドのデータ管理技術(広域分散ストレージ、トレーサビリティー、WSDBank等)を活用して管理する。さらに、NICTサイエンスクラウドのアプリケーション(STARStouch等)による公開の試行などを行う。

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静止軌道衛星帯電プラズマ環境の解析および予測の研究

 静止軌道衛星は、通信・放送・気象観測等に広く用いられ、社会インフラとして重要な役割を担っている。静止軌道衛星の軌道上の障害の主要な原因の一つに、帯電現象がある。衛星帯電には、内部帯電と表面帯電がある。そのうち表面帯電は、主としてサブストームに伴う高温の電子によって引き起こされていることが知られている。本研究では、LANL静止軌道衛星の延べ約39年分におよぶ膨大なデータを用いて、甚大な衛星障害を引き起こすと考えられる荒れたプラズマ環境データに対して極値統計を用いた解析をおこない、その分布や発生頻度、発生機構について調べる。また、NICTでおこなわれていたリアルタイム磁気圏シミュレーションのデータと衛星観測データを比較検証することで、磁気圏シミュレーションの静止軌道プラズマ環境の再現性を検証し、それを用いた予測手法の研究をおこなう。

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ジオスペース・放射線帯予測

 サイエンスクラウドの計算機リソース、ストレージ、データ収集機能を活用して、ジオスペース・放射線帯予測に向けた研究開発を行う。具体的には次の3つである。

 1)放射線帯経験予測モデルの開発及び予測サービスの運用
太陽風データ、地磁気活動指数、衛星位置での放射線帯粒子flux(各エネルギーレンジ、ピッチ角分布)を元に放射線帯のある位置におけるflux変動の時間変化を予測する経験モデルを開発する。基本的には1次元のモデルであるため、空間的な広がりを2)の研究開発と組み合わせて再現するために、複数衛星や、異なるエネルギーレンジ、ピッチ角分布の観測情報を再現する経験予測モデル群を開発する。

 2)放射線帯・ジオスペース数値予測モデルの開発
将来の放射線帯・ジオスペースの数値予測に向けて、数値予測モデルの開発を行う。具体的には、前述した1次元の経験モデルの予測値を基に、粒子追跡手法等を用いて、磁気圏内の3次元分布の再構築を行ったり、その後の時間発展を、粒子の加速・加熱や消失過程の計算を取り入れて推定し、3次元的な放射線帯・ジオスペースの数値予測を行う。粒子追跡手法や粒子の加速・加熱、消失過程の計算プロセスを開発・改良すると同時に、背景場となる磁場・電場の3次元分布をグローバルMHDシミュレーションから取り込む必要があるため、MHDシミュレーションとの連携に関する計算も必要となる。結果は、3)の観測等を用いて比較・検証していく。

 3)ジオスペース環境変動の観測及び地磁気脈動現象の検出
日本近傍の極域に展開した磁力計、HFレーダ観測網、及びそれを足掛かりにしたグローバルな観測データを用いて、放射線帯粒子変動の鍵を握る地磁気脈動現象及びその空間分布を同定する手法の研究開発や粒子の拡散・加速に関する経験モデルを構築する。

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南極観測

 電離層定常観測及びその補助データとして、南極昭和基地、及びしらせ航路上で計測したデータ、及び国内外の比較・試験サイト(稚内、サロベツ、アラスカ・ポーカーフラット、等)にて計測したデータを収集・蓄積し、データ処理や解析を実施する環境をクラウド上に構築する。その環境下において、遠隔地の観測システムの監視や効率的なデータ収集のための研究開発、南極昭和基地における電離層長期変動の解析、GPSシンチレーション観測装置を用いたGPSシンチレーションの発生や測位に対する影響、及び電離層電場ドリフトの導出、しらせで計測した長波標準電波の電界強度・位相情報の解析と、長波の中・長距離伝搬計算手法との比較・検証等を行う。

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次世代宇宙天気情報処理の研究

 並列処理によるデータ処理や可視化などの研究を行う。また、過去のデータをデータベース化して参照できるようにする。

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社会インフラのメインテナンスに資するシミュレーションとセンシングデータの解析

 年数を経た社会基盤構造物(インフラ)が急増する中,安全性や機能の確保が重大な課題になりつつある。主要構造物は遠隔管理による構造ヘルスモニタリング(SHM)が実用化されているものもあるが,道路橋を例にとれば,長大橋以外の地方の中小橋梁については,その膨大な数が故にSHMは実施されておらず,今後しばらくはコスト的な問題で実現はしないであろう。従って,ポータブルな検査装置を用いて,スケジュールに基づいてオンサイト計測を行うことが,中小規模の橋梁を検査する上では有効な手段となる。

 多点において大量のセンシングデータが得られるようになった昨今、そのビッグデータを維持管理に活かすためには、データの集約、高速解析、異常箇所の抽出がキーとなる。ここで、現場の検査員が視覚的に損傷を検出できれば、検査効率は向上する。これまで、研究代表者らは、インフラ上の多点に設置したセンサから得られるデータを無線通信によって基地局PCに転送し、基地局PCでインフラの動態可視化・損傷評価を行ってきたが、膨大な社会インフラを管理するためには、サイエンスクラウドの利用が効果的である。本申請では、オンサイト計測で得られたインフラのセンシングデータ(振動等の動的指標)をクラウドに転送し、クラウド上で解析を行うことで、インフラの健全性の検査を効率的に行うことを目的とする。

 また、センシングによって損傷位置を特定するためには、インフラのセンシングモデルが必要となる。具体的には、インフラの数値モデルを作成し、振動モード同定のための大規模固有値解析をサイエンスクラウドで行う。数値モデルによる解析結果と計測結果をマージさせて損傷位置を同定するための逆解析や、あるいはデータ同化手法によってインフラの余寿命予測を行うことを予定している。

 以上、センシングの高度化という観点から、サイエンスクラウドを利用した社会インフラのメインテナンスに資する研究を実施する。

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フェーズドアレイ気象レーダのデータ利用システム

 並局地的大雨や竜巻・突風等による突発的災害の予測と軽減を目指して、10~30秒間で隙間のない完全な3次元降水分布を高分解能で観測することができるフェーズドアレイ気象レーダを (株)東芝、大阪大学、(独)情報通信研究機構(NICT)の産学官連携体制で開発した。本レーダは大阪大学吹田キャンパスの電気系建屋に設置され、2012年6月から試験観測を開始している。最大レートの観測モード(約2TB/日)では現地に設置されたオリジナルのローカルディスクには1週間程度の観測データしか保存できないため、高速ネットワークを介して大規模ストレージにデータを自動転送・保存することが望まれている。同時にリアルタイムでのデータ公開が求められている。さらに観測された過去データを用いた解析的研究を進める必要がある。そこで本研究では、これらの課題を解決するためにNICTサイエンスクラウド上にフェーズドアレイ気象レーダのデータ利用システムを構築して、リアルタイムでのデータ転送と確実なデータアーカイブ、リアルタイムでのクイックルック画像の作成とデータ公開、L3データ作成、3次元データ可視化などを目指すとともに、外部研究者も利用することができるデータ解析環境の提供を行い、多くのユーザを確保して研究成果を上げることを目標とする。また、2014年3月にNICT神戸(未来ICT研究所)とNICT沖縄センターに設置したフェーズドアレイ気象レーダ・ドップラーライダー融合システム(PANDA)の観測データも平成26年度から外部利用者に提供を行う。

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SALMON・亜熱帯・都市環境観測データネットワークシステム

 NICTが実施してきた地上からのリモートセンシングによる環境計測データを中心として、北極域環境計測データ(旧アラスカプロジェクトおよび関連観測)、沖縄亜熱帯環境計測データ(COBRA、海洋レーダ、400MHz帯プロファイラ、地表気象等)、都市環境計測データ(おもに小金井の地上気象、1.3GHz帯ウィンドプロファイラ、タワー観測、ラジオメータ観測、等)および国内の関連計測データについてのデータセットのアーカイブおよび機構内外研究における利活用を推進するためのWeb上での研究用データプロット表示、利用者向けデータダウンロード、かつこれらのうち可能なものについてはカタログを整備するなどして、自然科学側からの今後のデータ利活用のための方向性を明らかにすることを目指した実験をあわせて行っていきたい。

・利用する計算機資源:
  1)小金井:担当者保有サーバーのホスティング
  2)けいはんな:VMによるSALMON等のデータコピーとデータハンドリング
プロセスの実装試験・試用
  3)NICT研究系ネットワークにもサーバを持つため、NICT研究系、上記1)、上記2)の相互での通信が必要となる場合がある。必要なサービス、ポートについてはホストの接続申請などで行う予定である。

プロジェクト名研究代表者所属
NICTサイエンスクラウド高速データ転送表示技術開発 渡邉 英伸情報通信研究機構
NICTサイエンスクラウドセキュリティ技術開発 渡邉 英伸情報通信研究機構
Integrated Satelite Observaion SIMulator for a Coherent Doppler Lidar (ISOSIM-L)による衛星搭載ドップラーライダーのフィジビリティスタディ 石井 昌憲情報通信研究機構
時系列データ表示アプリケーション(STARStouch)の開発 村田 健史情報通信研究機構
3次元Global MHDシミュレーション大規模可視化 深沢 圭一郎九州大学
太陽圏の巨視的構造とダイナミックスの研究 鷲見 治一アラバマ大学
科学衛星搭載プラズマ波動観測器で得られた波形データの特徴解析 笠原 禎也金沢大学
惑星間空間磁場北向き時の磁気圏電離圏対流機構の解明 渡辺 正和九州大学
SS-MIX標準ストレージのNoSQL実装と並列分散処理の検証 木村 映善愛媛大学
SMILESデータ処理 笠井 康子情報通信研究機構
宇宙天気シミュレーション 田 光江情報通信研究機構
東南アジア域低緯度電離圏観測(SEALION) 津川 卓也
横山 竜宏
情報通信研究機構
GNSS全電子数観測を利用した電離圏の研究 津川 卓也
西岡 未知
情報通信研究機構
太陽風―磁気圏電離圏システム相互作用 久保田 康文情報通信研究機構
NICTサイエンスクラウドを用いたゲノムデータ管理基盤に関する研究開発 原田 憲治(株)カイ研究開発部
GNSS可降水量データベース 藤田 実季子情報通信研究機構
気象分野におけるビッグデータ利活用技術の研究 大野  智生情報通信研究機構
静止軌道衛星帯電プラズマ環境の解析および予測の研究 中村 雅夫情報通信研究機構
ジオスペース・放射線帯予測 長妻 努情報通信研究機構
南極観測 長妻 努情報通信研究機構
次世代宇宙天気情報処理の研究 亘 慎一情報通信研究機構
社会インフラのメインテナンスに資するシミュレーションとセンシングデータの解析 中畑 和之愛媛大学
フェーズドアレイ気象レーダのデータ利用システム 佐藤 晋介情報通信研究機構
SALMON・亜熱帯・都市環境観測データネットワークシステム 村山 泰啓情報通信研究機構

平成25年度

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太陽圏の巨視的構造とダイナミックスの研究

 太陽風プラズマの本格的な研究は1960年代初頭、人工衛星による宇宙空間の観測が始まると同時に、太陽コロナを源として3次元的に超音速で拡がる太陽風プラズマ超音速流の観測的確認から始まった。また太陽風プラズマの状態が太陽フレアーやコロナ質量放出(CME)などの太陽活動や太陽光球面での磁場配位に大きく依存することが次第に明らかになってきている。一方、太陽風プラズマが銀河系空間内でどこまで広がっているか、また星間ガスとの相互作用よりどのような形状やダイナミックな事象が生じているかについて新たな関心が広がり、太陽圏の研究という新たな研究分野が認知されて来ている。1977年に打ち上げられたボイジャー1号及び2号が、2004年及び2007年に相次いで太陽圏外圏の終端衝撃波を通過し、太陽圏外圏への関心は一挙に高まり、また観測、理論および計算機シミュレーション研究により研究内容も大きく進展して来ている。

 一方、宇宙天気予報の観点からは太陽表面でのダイナミックなプラズマ活動の地球環境へ及ぼす影響を系統的に且つ精度高く調べることが必要となって来ている。このための基礎研究として太陽表面での観測データを用いて、太陽表面から惑星間空間へと拡がる太陽風プラズマの3次元速度分布を迅速且つ高制度で求めることが必要である。

 本研究では内部太陽圏から外部太陽圏にわたる広大な領域での多くの現象を系統的な現象であるとの観点から研究を推進していく。複雑多岐にわたる多くの課題の中でとりわけ重要かつ基本的な研究課題としては太陽表面での磁場観測データなどを用いて惑星間空間中に広がる太陽風プラズマの計算機シミュレーションによる3次元分布の高精度解析であろう。

 シミュレーション解析及び種々のグラフ機能を用いて精度の高い3次元太陽風速度分布及び惑星間空間磁場分布を求めることが本研究のこれから数年にわたる中心課題である。

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GNSS全電子数観測を利用した電離圏の研究

 1990年代半ばから発達した、GPS受信機網データを利用した電離圏全電子数(TEC)観測により、さまざまな電離圏擾乱現象を、2次元的かつ定常的に観測することが可能になっている。また、近年GPS等の衛星測位の高度利用に伴い、測位誤差の最大要因である電離圏変動とその衛星測位に対する影響に関する研究が進められている。しかし、既存の全球TECマップや、現在GPSの電離圏遅延量補正に用いられている電離圏モデルは、空間分解能が不十分であるため、衛星測位への影響が大きいプラズマバブルなど中規模(数100-1,000kmスケール)の空間構造を持つ電離圏変動の全体像や生成機構、衛星測位への影響は明らかになっていない。これを明らかにするためには、広域かつ高密度の電離圏観測網の構築と衛星測位への影響調査が必要である。本研究では、国内外のGPS受信機網データを利用した高解像度電離圏観測技術の開発及び大規模データベース構築を進め、これらのデータを利用して、様々な時間・空間スケールを持つ電離圏擾乱現象について、その原因や全体像を解明することを目的とする。また、電離圏擾乱の衛星測位への影響など、電離圏以外の分野への影響に関する研究も行う。

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科学衛星搭載プラズマ波動観測器で得られた波形データの特徴解析

 我々の研究グループは、科学衛星によるプラズマ波動観測データを用いた宇宙プラズマ中の波動・粒子相互作用の物理機構の解明に取り組んでいる。特に波形観測は非常に有力な観測手段であるが、一般に波形データは、時間分解能が高く、データ量が膨大なため、観測データから興味ある現象を人手で選別・解析をすることが非常に困難である。

 

 この問題に対し我々は、プラズマ波動の周波数スペクトルや、時間波形の特徴をパターン認識の手法を用いて、物理的に有意なデータを計算機の力で自動抽出し、その特性を解析する高度知的信号処理法の開発を行い、「あけぼの」「かぐや」などのデータ解析において多くの研究成果をあげてきた。

 

 しかしながら、あけぼの衛星は過去23年余りにわたり、約20TB超の広帯域波形観測データを取得し、その大半は磁気テープに保管された状態で詳細解析に至っていない。またかぐや衛星によるWFC波形観測データも数百GBに達しており、汎用の計算サーバではその解析に多大な計算時間を要することが問題となっている。

 

 このため、大容量データを高効率かつ高速に一括処理するための信号処理手法を開発し、これまでに蓄積された波形観測データを一括して解析する環境の整備が必要とされている。このような背景のもと、本研究プロジェクトは、NICTサイエンスクラウドを活用することで、より網羅的で高度なデータ処理手法を開発し、開発した手法を駆使して、新たな科学的成果につなげることを目的としている。

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生体電磁環境プロジェクト

 1990年代半ばから発達した、GPS受信機網データを利用した電離圏全電子数(TEC)観測により、さまざまな電離圏擾乱現象を、2次元的かつ定常的に観測することが可能になっている。また、近年GPS等の衛星測位の高度利用に伴い、測位誤差の最大要因である電離圏変動とその衛星測位に対する影響に関する研究が進められている。しかし、既存の全球TECマップや、現在GPSの電離圏遅延量補正に用いられている電離圏モデルは、空間分解能が不十分であるため、衛星測位への影響が大きいプラズマバブルなど中規模(数100-1,000kmスケール)の空間構造を持つ電離圏変動の全体像や生成機構、衛星測位への影響は明らかになっていない。これを明らかにするためには、広域かつ高密度の電離圏観測網の構築と衛星測位への影響調査が必要である。本研究では、国内外のGPS受信機網データを利用した高解像度電離圏観測技術の開発及び大規模データベース構築を進め、これらのデータを利用して、様々な時間・空間スケールを持つ電離圏擾乱現象について、その原因や全体像を解明することを目的とする。また、電離圏擾乱の衛星測位への影響など、電離圏以外の分野への影響に関する研究も行う。

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惑星間空間磁場北向き時の磁気圏電離圏対流機構の解明

 地球磁気圏におけるプラズマ対流は物質の輸送とともに電磁エネルギーの輸送(ポインティングフラックス)も担っている。また対流は沿磁力線電流と密接な関係があり、電離圏との結合系においては、電流が磁気圏・電離圏でどう閉じているかを同時に考察する必要がある。惑星間空間磁場(IMF)が北向き時においても、太陽風のエネルギーは磁気圏に流入し様々な磁気圏・電離圏現象を引き起こしている。しかし観測上の制約から、その物理過程の理解は著しく原始的なままにとどまっている。太陽風-磁気圏-電離圏結合系の研究におけるこの停滞状態を打破するためには、(1)理論モデル(2)数値シミュレーション(3)観測を組み合わせた三位一体の取り組みが重要である。本研究プロジェクトでは、(2)数値シミュレーションの側面から、IMF北向き時の対流とその起源をエネルギー論の観点から解明する。具体的現象としては、昼側カスプ域に現れるIMF BY(朝夕)成分に制御される沿磁力線電流系(いわゆるNBZ, midday region 1)、夜側プラズマシート境界層付近に現れるIMF BY成分に制御される沿磁力線電流系、シータオーロラ、三日月型対流セルの変形、交換対流セルの形成、混成対流セルの形成、などがある。数値シミュレーションでこれらの現象の再現を試み、再現が成功すれば背後にある物理過程を明らかにするとともに、極域電場ポテンシャルや沿磁力線電流分布など、シミュレーション結果を観測と比較可能な形で表現する。シミュレーションを観測データの解釈に用いる場合もあるし、逆にシミュレーションで発見された現象を観測データで検証する場合もある。観測とシミュレーションの比較で生じる相乗効果を狙っている。

 具体的な進め方は、田中高史氏(NICT/九州大学)が開発し藤田茂氏(気象大学校)が改良を進めている太陽風-磁気圏-電離圏結合系電磁流体コードを高速計算機で走らせ、結果をクラウド内の「バーチャルオーロラ」で可視化する。重要だが技術的に困難な点として、磁場トポロジーの可視化がある。磁気中性点とそこから出る磁気面の追跡が出来れば理論的にはグローバルなトポロジーは決定されるが、実用的アルゴリズムは未だない。このアルゴリズム考えるとともに、シミュレーション結果の解析・物理的解釈を進めていく。

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GNSS可降水量データベース

 GNSS可降水量データセットについて、最高水準の水蒸気データセットとして、多くの研究者とデータ共有するためにOSN上にデータを公開する。可能であれば、Webページを開設し、ブラウザ上で緯度経度情報などからデータを検索できるツールを設け利便性の向上を検討する。

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宇宙天気シミュレーション

 宇宙天気プロジェクトを推進する目的で、スーパーコンピュータを用いた数値シミュレーションにより、太陽、太陽風、磁気圏、電離圏までのモデリングを目指す。現在ハウジングをしている高速計算システム(スーパーコンピュータシステム)の利用を行う。

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次世代宇宙天気情報処理の研究

 並列処理によるデータ処理や可視化などの研究を行う。

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静止軌道衛星帯電プラズマ環境の解析および予測の研究

 静止軌道衛星は、通信・放送・気象観測等に広く用いられ、社会インフラとして重要な役割を担っている。静止軌道衛星の軌道上の障害の主要な原因の一つに、帯電現象がある。衛星帯電は、主としてサブストームの間におこっていることが知られているが、サブストーム以外でも、衛星帯電を引き起こすと考えられる事象がある。本研究では、これまであまり着目されてこなかったサブストーム以外の衛星帯電を引き起こす事象を、科学衛星データを用いて解析する。特に、温度がそれほど高くないが密度が濃い電子による衛星帯電事象に着目し、分布や発生頻度、発生機構について調べる。また、NICTでおこなわれていたリアルタイム磁気圏シミュレーションのデータと衛星観測データを比較検証することで、磁気圏シミュレーションの静止軌道プラズマ環境の再現性を検証し、それを用いた予測手法の研究をおこなう。

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大気圏-電離圏長期シミュレーションデータの解析

 大気圏-電離圏結合モデルを用いて長期シミュレーションを実行し、大容量の出力データをクラウド上で解析することにより、気象・気候変動と宇宙天気の関連について新たな知見を求める。

 研究内容としては①長期シミュレーションデータの作成と②出力データの解析の2段階から成る。①については、NICTと九州大学、成蹊大学にて開発を行ってきた大気圏-電離圏モデルに、気象庁から提供される再解析データを入力として、現実指向のシミュレーションを数十年分実行する。計算自体は主としてNICTスーパーコンピュータシステム上で行う。②については、まずは①の出力データが最終的に300TB程度に及ぶと予想されるため大容量データの置き場所として、かつプロジェクトメンバー間でデータを共有するために、NICTサイエンスクラウドをストレージとして利用する。そして、解析を行う段階では、長期間データ全体を対象にした解析(例えば時空間スペクトル分解を施した各変動成分の抽出、気象現象と超高層大気変動との相関分析)や、一部の期間に着目する解析(例えばイベント解析、観測との比較)などを行う予定である。前者については、並列分散解析が必要性になると予想されるが、シミュレーションデータの検証や担当者の今後の技術習得に要する時間を考慮し、本格的な実施はH26年度を想定している。また、現時点のメンバー以外にシミュレーションデータに興味を持つ研究者が現れることも予想され、メンバーが増加する可能性やデータ提供の手段も必要に応じて検討する。

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太陽圏モデリング

 コンピュータシミュレーションや地上・衛星観測データを用いて、太陽圏のモデリングに関する研究を行う。

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太陽風-磁気圏電離圏システム相互作用

 MHDシミュレーションを用いて、磁気圏電離圏対流系が太陽風によってどのように駆動されているかを精密に調べる。

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地球磁気圏の形状と自由エネルギーに関する初期研究:大規模3次元電磁流体計算と観測を比較する方法の確立

 オーロラをはじめとする地球磁気圏の擾乱現象が起こる原因を直接観測するべく、人工衛星による多くの観測が行われてきた。2007年に打上げられたNASAのTHEMIS衛星は、5機による同時観測により、磁気圏内に形成する薄くて高温なプラズマシートの形状とその時間発展が調べられるようになると期待されている。

 プラズマシートの形状は、そこでどのような不安定が起こるのかを決定する重要な情報である。これを観測および、大規模3次元電磁流体計算から求めることは、オーロラ嵐(サブストーム)を予報する上で不可欠なステップといえる。

 しかし、これまで大規模3次元電磁流体シミュレーションが、実際にどの程度、観測と類似しているか、定量的な比較は行われたことはない。オーロラ現象や磁気圏擾乱の強度(解放されるエネルギー)には、大きなばらつきがあるが、このようなばらつきを予報する定量的な変化がシミュレーションで得られるかなどを調べることが重要である。

 本研究では、シミュレーションで得られたプラズマシートの形状と、そのときに人工衛星が観測する変化を予測する。これと実際の観測の比較から、地球磁気圏サブストームの予報可能性を定量的に評価する。

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ジオスペース・放射線帯予測

 サイエンスクラウドの計算機リソース、ストレージ、データ収集機能を活用して、ジオスペース・放射線帯予測に向けた研究開発を行う。具体的には次の3つである。

1)放射線帯経験予測モデルの開発及び予測サービスの運用

 太陽風データ、地磁気活動指数、衛星位置での放射線帯粒子flux(各エネルギーレンジ、ピッチ角分布)を元に放射線帯のある位置におけるflux変動の時間変化を予測する経験モデルを開発する。基本的には1次元のモデルであるため、空間的な広がりを2)の研究開発と組み合わせて再現するために、複数衛星や、異なるエネルギーレンジ、ピッチ角分布の観測情報を再現する経験予測モデル群を開発する。

2)放射線帯・ジオスペース数値予測モデルの開発

 将来の放射線帯・ジオスペースの数値予測に向けて、数値予測モデルの開発を行う。具体的には、前述した1次元の経験モデルの予測値を基に、粒子追跡手法等を用いて、磁気圏内の3次元分布の再構築を行ったり、その後の時間発展を、粒子の加速・加熱や消失過程の計算を取り入れて推定し、3次元的な放射線帯・ジオスペースの数値予測を行う。粒子追跡手法や粒子の加速・加熱、消失過程の計算プロセスを開発・改良すると同時に、背景場となる磁場・電場の3次元分布をグローバルMHDシミュレーションから取り込む必要があるため、MHDシミュレーションとの連携に関する計算も必要となる。結果は、3)の観測等を用いて比較・検証していく。

3)ジオスペース環境変動の観測及び地磁気脈動現象の検出

 日本近傍の極域に展開した磁力計、HFレーダ観測網、及びそれを足掛かりにしたグローバルな観測データを用いて、放射線帯粒子変動の鍵を握る地磁気脈動現象及びその空間分布を同定する手法の研究開発や粒子の拡散・加速に関する経験モデルを構築する。

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南極観測

 電離層定常観測及びその補助データとして、南極昭和基地、及びしらせ航路上で計測したデータ、及び国内外の比較・試験サイト(稚内、サロベツ、アラスカ・ポーカーフラット、等)にて計測したデータを収集・蓄積し、データ処理や解析を実施する環境をクラウド上に構築する。その環境下において、遠隔地の観測システムの監視や効率的なデータ収集のための研究開発、南極昭和基地における電離層長期変動の解析、GPSシンチレーション観測装置を用いたGPSシンチレーションの発生や測位に対する影響、及び電離層電場ドリフトの導出、しらせで計測した長波標準電波の電界強度・位相情報の解析と、長波の中・長距離伝搬計算手法との比較・検証等を行う。

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Integrated Satellite Observation SIMulator for a Coherent Doppler Lidar (ISOSIM-L)による衛星搭載ドップラーライダーのフィジビリティスタディ

 衛星ドップラーライダーシミュレータISOSIM-Lを用いてドップラーライダーのフィジビリティスタディ

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フェーズドアレイ気象レーダのデータ利用システム(気象レーダの3次元視覚化を改題

 1990年代半ばから発達した、GPS受信機網データを利用した電離圏全電子数(TEC)観測により、さまざまな電離圏擾乱現象を、2次元的かつ定常的に観測することが可能になっている。また、近年GPS等の衛星測位の高度利用に伴い、測位誤差の最大要因である電離圏変動とその衛星測位に対する影響に関する研究が進められている。しかし、既存の全球TECマップや、現在GPSの電離圏遅延量補正に用いられている電離圏モデルは、空間分解能が不十分であるため、衛星測位への影響が大きいプラズマバブルなど中規模(数100-1,000kmスケール)の空間構造を持つ電離圏変動の全体像や生成機構、衛星測位への影響は明らかになっていない。これを明らかにするためには、広域かつ高密度の電離圏観測網の構築と衛星測位への影響調査が必要である。本研究では、国内外のGPS受信機網データを利用した高解像度電離圏観測技術の開発及び大規模データベース構築を進め、これらのデータを利用して、様々な時間・空間スケールを持つ電離圏擾乱現象について、その原因や全体像を解明することを目的とする。また、電離圏擾乱の衛星測位への影響など、電離圏以外の分野への影響に関する研究も行う。

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バーチャルオーロラツールを活用したデジタル磁気嵐現象の研究

 地球固有の磁場が卓越する宇宙空間を磁気圏と呼ぶ。特に双極子型の磁場が強い領域を内部磁気圏と呼び、数eVから数十MeVに至る様々なエネルギーを持つ荷電粒子が捕捉されている。これらの粒子は、エネルギーが低いものから順にプラズマ圏、リングカレント、放射線帯と呼ばれている。強い南向きの惑星間空間磁場や高速の太陽風が磁気圏を直撃すると磁気嵐がおこる。磁気嵐の特徴は、(1)高エネルギーの荷電粒子が内部磁気圏に蓄積し、リングカレントが大きく発達すること、(2)相対論的速度を持つ粒子が数桁にわたって減少、増加することにある。粒子のグローバルな輸送と加速を決定づけるのは電場であることから、磁気圏電場を理解することは磁気嵐時に発現する粒子変動を理解する上で必須である。磁気圏電場は太陽風と磁気圏の相互作用の結果生じる磁気圏対流に加え、サブストーム時に顕在化する力学過程も寄与するため単純ではない。本開発研究は、田中高史九州大学名誉教授が開発を進めているグローバル電磁流体シミュレーションと内部磁気圏フォッカープランクシミュレーションを組み合わせ、放射線帯の変動を「磁気嵐の力学」として捉えること目的とする。

 グローバル電磁流体シミュレーションは地球半径の数百倍を計算領域とし、1ステップあたり約7 GBのファイルを出力する。磁気嵐は一般に半日から1日の時間スケールの現象であるから、一つの磁気嵐を再現するためには約150 TBのディスク容量が必要であり、研究室内でデータを保管することは不可能である。また、このような大容量のデータを解析し、磁気嵐の力学を明らかにするためには、高速な解析用ワークステーションが必要である。本研究では、京都大学、大阪大学およびNICTのスーパーコンピューターで計算した大容量データをNICTサイエンスクラウドに転送し、研究室レベルでは不可能な大容量データの解析を行う。得られた大容量データを入力として内部磁気圏フォッカープランクシミュレーションを実行し、放射線帯変動の理解と再現を目指す。

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東南アジア域低緯度電離圏観測(SEALION)

 プラズマバブルなど衛星測位や衛星通信に影響を与える低緯度電離圏擾乱現象の研究を目的とする東南アジア域低緯度電離圏観測網(SEALION)のデータを、効率的かつ省力的に収集・蓄積・データ処理・可視化するシステムの開発を行う。また、その観測データやクラウド上の関連するデータ(GPS-TECデータ等)を利用し、プラズマバブルの発生・伝搬機構の解明や、予測に向けた研究を行う。

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短波到来方向探査装置を利用した電離圏の研究

 低緯度電離圏で日没後に発生するプラズマバブルは、衛星信号のシンチレーション障害やロック損失を引き起こす。陸地が少ない日本の経度域におけるプラズマバブルの発生・伝搬の現況把握や予報をするためには、西太平洋域の定常的な遠隔観測が有効である。そのような遠隔観測の一つとして、NICT大洗テストフィールドの短波到来方向探査装置により、豪州の短波放送を日本の方探設備で受信する赤道横断電波伝播(HF-TEP)実験を行っている。本研究では、HF-TEPを利用したプラズマバブルの広域モニタリング・伝搬予測に関する研究開発を行うとともに、短波到来方向装置を利用した中規模TIDやスポラディックEsの観測など様々な電離圏擾乱に関する研究も行う。

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SS-MIX標準ストレージのNoSQL実装と並列分散処理の検証

背景

日本では、医療情報交換のためにSS-MIX標準ストレージが策定されている。SS-MIXはHL7メッセージを標準的なディレクトリ構造の規則に従って格納するだけであり、相互参照が容易な標準規格である。しかしながら、この標準規格はファイルベースでの医療情報交換をベースにデザインされたものであり、全国規模の医療情報を蓄積するスケーラビリティに欠けている。私たちはSS-MIXのシンプルさを確保しつつ、大規模なデータ蓄積と高速検索可能性を確保するための仮想ファイルシステムの構築・検証に取り組みたい。

方法(NICTサイエンスクラウド上で行う実験)

 SS-MIXと互換性を保つために、患者ID、ディレクトリ構造、オーダ種のメタデータとHL7 2.xメッセージを一つのBSON文書として構成し、MongoDBに格納する。国民全体のレコードを保有すると仮定し、検査結果をランダムに生成したHL7メッセージを100億件生成し、100CPUコア上のmongodbに分散配置する。また、通常のファイルシステムとしてマウントできるように、SS-MIXの構造をmongoDB上で再現するFUSEモジュールを開発する。

 性能測定として、特定年齢・性別の各種検査結果の平均値、分散を求めるMapReduce処理を行う。また研究進捗に余裕があれば、より複雑なデータマイニング処理等も検討する。

期待する結果

 mongoDBを用いた医療情報処理システムは全国民規模のデータを保有しても、実用的な処理性能があることを提示したい。

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NICTサイエンスクラウドを用いたゲノムデータ管理基盤に関する研究開発

 ヒトのゲノム・シーケンス情報の管理基盤の研究開発が目的です。

 次世代シーケンサーの普及によりヒト及び生物のゲノム・シーケンス情報の抽出が容易になりました。

しかしヒトの場合でいうと全ゲノム配列データだけで約1GB(30億塩基)、そのデータの元となるシーケンサーからの出力データはその数十倍のデータ量に及びます。それらの大量のデータをセキュリティリスクからの回避、耐故障性の担保される環境の構築が今求められております。
それらに加え、高速なデータ転送、高速処理などが可能なNICTサイエンスクラウドが最適なクラウド環境と考えました。

  • ヒト・生物のシーケンス情報の保管
  • 既存のシーケンス解析・ゲノム解析アプリケーションの運用
  • シーケンス解析・ゲノム解析アプリケーションの新規開発・改良版の開発・運用
  • シーケンス解析・ゲノム解析アプリケーションの開発用APIの開発と普及

 以上のような機能を備えたゲノム・シーケンス情報の管理基盤をNICTサイエンスクラウド上で実現するための研究開発を行いたいと考えております。

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社会インフラのメインテナンスに資するシミュレーションとセンシングデータの解析

 年数を経た社会基盤構造物(インフラ)が急増する中,安全性や機能の確保が重大な課題になりつつある.主要構造物は遠隔管理による構造ヘルスモニタリング(SHM)が実用化されているものもあるが,道路橋を例にとれば,長大橋以外の地方の中小橋梁については,その膨大な数が故にSHMは実施されておらず,今後しばらくはコスト的な問題で実現はしないであろう.従って,ポータブルな検査装置を用いて,スケジュールに基づいてオンサイト計測を行うことが,中小規模の橋梁を検査する上では有効な手段となる.

 多点において大量のセンシングデータが得られるようになった昨今,そのビッグデータを維持管理に活かすためには,データの集約,高速解析,異常箇所の抽出がキーとなる.ここで,現場の検査員が視覚的に損傷を検出できれば,検査効率は向上する.これまで,研究代表者らは,インフラ上の多点に設置したセンサから得られるデータを無線通信によって基地局PCに転送し,基地局PCでインフラの動態可視化・損傷評価を行ってきたが,膨大な社会インフラを管理するためには,サイエンスクラウドの利用が効果的である.本申請では,オンサイト計測で得られたインフラのセンシングデータ(振動等の動的指標)をクラウドに転送し,クラウド上で解析を行うことで,インフラの健全性の検査を効率的に行うことを目的とする.

 また,センシングによって損傷位置がおおよそ決定できれば,次は損傷の性状を定量的に評価することが肝要となる.これまで,研究代表者らは,弾性波を構造物中に励起し,欠陥部からの散乱波を受信することで,欠陥を非破壊的に評価する手法についても研究を行ってきた.しかし,構造部材の形状・大きさ・材質は場所毎に異なるため,弾性波非破壊検査の精度を向上させるにはシミュレーションの援用が不可欠である.そこで,サイエンスクラウドを利用した弾性波シミュレーションの実施と波動伝搬の3次元可視化技術を加速することについても研究の目的とする.

 以上,センシングと非破壊検査の高度化という2つの観点から、サイエンスクラウドを利用した社会インフラのメインテナンスに資する研究を実施する.

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時系列データ表示アプリケーション(STARStouch)の開発

 現在、多くの科学研究分野ではデータのほとんどがデジタル化され、その量および種類は大規模化の一途をたどっている。これからますます大規模化・複雑化するデータ指向型科学時代を踏まえて、ビッグデータ処理がより容易に、また一元的行うことができるクラウドシステムが求められている。

 NICTサイエンスクラウドは、地球惑星科学を含む様々な科学研究データおよびソーシャルデータのためのクラウドシステムである。NICTサイエンスクラウドでは(1)データ伝送・データ取集機能、(2)データ保存・データ管理機能、(3)データ処理・データ可視化機能の3つの柱(機能)から構成されている。それぞれの機能についての基盤技術を開発するだけではなく、複数の基盤技術を組み合わせることでシステム化を行うことができる。システムを実際に科学研究に応用・適用することで、様々な分野でのビッグデータ科学・データインテンシブ科学が可能となる。

 本研究では、NICTサイエンスクラウド上で時系列データ表示ツール(開発名:STARStouch)の研究開発を行う。これまでの多くの時系列データ表示用科学データWebアプリケーションは、Webアプリ用のミドルウェアなどによりデータの読み込みと画像表示を行ってきた。その多くは、日時やデータ選択を行う手間やデータ処理を行う処理時間がユーザビリティーを下げていた。STARStouchはクラウド上のデータ収集システム(NICTY/DLAおよびWONMシステム)により収集した科学データをGfarm/Pwrake等により並列処理することで画像化した時系列画像データを用いる。また、Ajaxやキャッシュプログラムにより閲覧しているデータに近いデータを優先的に読み込む非同期処理を導入することでユーザビリティーを上げている。

 STARStouchは様々な時系列データに対応するが、本研究では、特に、①GEOTAIL衛星などの衛星ミッションの複数データ(プラズマ波動データを含む)、②地上でグローバルに観測されている地磁気データ、③オーロラ撮像などの画像データを主対象とする。

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気象分野におけるビッグデータ利活用技術の研究

 ひまわり初号機から7号機までのデータ及び平成26年度以降に打ち上げが予定されているひまわり8号・9号の大容量データを、分散アーカイブ等の情報通信技術の実証研究を行っている情報通信研究機構のNICTサイエンスクラウドに提供し、気象庁外の多様な研究コミュニティーさらには広く一般の利用者に利活用しやすい形で提供する技術の研究を、気象庁と情報通信研究機構が共同して行う。

 具体的には、NICTサイエンスクラウドのデータ収集技術(NICTY・WONM等)を用いて、気象庁が用意するサーバーからひまわり衛星(過去・現在・将来)のデータを収集する。

 収集したデータは、NICTサイエンスクラウドのデータ管理技術(広域分散ストレージ、トレーサビリティー、WSDBank等)を活用して管理する。さらに、NICTサイエンスクラウドのアプリケーション(STARStouch等)による公開の試行などを行う。

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NICTサイエンスクラウド高速データ転送表示技術開発

 クラウドコンピューティングなどで利用される広域分散型ストレージシステムでは,LFN(Long Fat Network) のエンドツーエンド通信における高速なデータ移行の課題が残っている.この問題に対して,本研究ではアプリケーションレベルで高速なデータ転送を実現するUDT を用いた並列ファイル転送ツールを開発する.また,TDW(Tiled Display Wall)に転送したデータをリアルタイムに同期をとりながら出力するアプリケーションの開発も行う.

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NICTサイエンスクラウドセキュリティ技術開発

 クラウドコンピューティングなどで利用される広域分散型ストレージシステムにおけるセキュリティは,従来のセキュリティ要件である機密性,完全性,可用性に加え,真正性,責任追跡性,信頼性も必要とされている.Gfarm のセキュリティにおいては,責任追跡性,真正性,完全性についての研究開発はまだ十分に進んでいない.Gfarmにおける責任追跡性,真正性,完全性を保証するセキュリティ技術の研究開発を行う.

プロジェクト名研究代表者所属
太陽圏の巨視的構造とダイナミックスの研究 鷲見 治一アラバマ大学
GNSS全電子数計測を利用した電離圏の研究 津川 卓也情報通信研究機構
科学衛星搭載プラズマ波動観測器で得られた波形データの特徴解析 笠原 禎也金沢大学
生体電磁環境プロジェクト 渡辺 聡一情報通信研究機構
惑星間空間磁場北向き時の磁気圏電離圏対流機構の解明 渡辺 正和九州大学
GNSS可降水量データベース 藤田 実季子海洋研究開発機構
宇宙天気シミュレーション 品川 裕之情報通信研究機構
次世代宇宙天気情報処理の研究 亘 慎一情報通信研究機構
静止軌道衛星帯電プラズマ環境の解析および予測の研究 中村 雅夫大阪府立大学
大気圏・電離圏長期シミュレーションデータの解析 陣 英克情報通信研究機構
太陽圏モデリング 亘 慎一情報通信研究機構
太陽風-磁気圏電離圏システム相互作用 久保田 康文情報通信研究機構
地球磁気圏の形状と自由エネルギーに関する初期研究:大規模3次元電磁流体計算と観測を比較する方法の確立 齋藤 実穂名古屋大学
ジオスペース・放射線帯予測 長妻 努情報通信研究機構
南極観測 長妻 努情報通信研究機構
Integrated Satelite Observaion SIMulator for a Coherent Doppler Lidar (ISOSIM-L)による衛星搭載ドップラーライダーのフィジビリティスタディ 石井 昌憲情報通信研究機構
フェーズドアレイ気象レーダのデータ利用システム(気象レーダの3次元視覚化を改題) 佐藤 晋介情報通信研究機構
バーチャルオーロラツールを活用したデジタル磁気嵐現象の研究 海老原 祐輔京都大学
東南アジア域低緯度電離圏観測(SEALION) 津川 卓也情報通信研究機構
短波到来方向探査装置を利用した電離圏の研究 津川 卓也情報通信研究機構
SS-MIX標準ストレージのNoSQL実装と並列分散処理の検証 木村 映善愛媛大学医学部
NICTサイエンスクラウドを用いたゲノムデータ管理基盤に関する研究開発 原田 憲治株式会社カイ 研究開発部
社会インフラのメインテナンスに資するシミュレーションとセンシングデータの解析 中畑 和之愛媛大学大学院理工学研究科
時系列データ表示アプリケーション(STARStouch)の開発 村田 健史情報通信研究機構
気象分野におけるビッグデータ利活用技術の研究 大野 智生気象庁観測部気象衛星課
NICTサイエンスクラウド高速データ転送表示技術開発 渡邉 英伸情報通信研究機構
NICTサイエンスクラウドセキュリティ技術開発 渡邉 英伸情報通信研究機構

各プロジェクトでのサイエンスクラウドリソース利用状況(H.25)

H.25年度のサイエンスクラウド研究プロジェクトでのアプリケーション、サービスリソース利用状況です。